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小説と戯曲を共に含めた三島由紀夫(1925-1970)の全作品は数多くの文学作品からなっており、その内容や形式は古典日本文学の伝統だけではなく、フランス17世紀の古典主義や古代ギリシアの文学作品、特に古典悲劇にも端を発している。 本論文は、レイモン・ラディゲの小説『ドルヂェル伯の舞踏会』(Count Orgel Opens theBall, 1924)をモデルとした三島の処女作『盗賊』(The Thieves, 1948)に代表される三島の作家人生の初期に的を絞り、最初でありつつ最も重要な創作の原点となった20世紀のフランス人作家、レイモン・ラディゲの諸作品を分析することで、日本人作家三島が抱く西洋古典文学に対する深い関心の根源を明らかにする。