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Analecta Nipponica
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Melanowicz M.
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2017
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Limits of Memory: An Interpretation of The Changeling and Other Late Novels by Ōe Kenzaburō
100%
Melanowicz M.
Analecta Nipponica
|
2017
|
issue
7
267-277
JA
本論文で筆者はまず、ポーランドにおいて大江の作品がそれほど多く出版されていないこと、また最も重要な作品は1994年のノーベル文学賞受賞以前のものであると指摘する。しかしこのノーベル賞受賞者は21世紀にも意欲的に著書を発表し、その中には本論文でも取り上げる『おかしな二人組み』三部作の第一作目である『取り替え子 チェンジリング』(2000年)も含まれている。 三部作、そして『取り替え子』の主人公は二人だが、前面に出ている人物は大江健三郎その人をモデルとする作家の長江古義人である。そのパートナー(メダルの裏面という意味において)は、一巻目では監督の塙吾良であり、現実世界における伊丹十三である。この監督のおかげで、比較的概略的に形作られた主人公、古義人の複雑な側面が浮かび上がる。 『取り替え子』は三部作に含まれるものの、その物語は独立していて終わりがある。というのも物語の終末とともに主人公達の間の関係は終わるからである。『取り替え子』のプロローグとエピローグの間に古義人のベルリン滞在が語られるが、これは「隔離」つまり自身の過去と亡き吾良の残した録音を家で聞き彼の自殺の原因について「究明」しようとしたことからの隔絶である。 記憶を辿るとき、四国の家族との経験が最も重要なモチーフとして現れる。しかし妻の兄、塙吾良の死の原因の「究明」は失敗に終わる。何が起こり、何が吾良の人生を変えたのかを明かしうる少年時代の記憶の詳細を、主人公は辿ることができないのである。 エピローグになると視点が変わり、ベルリンから戻った古義人の荷ほどきをする妻である千樫が世界に目を向けるとき、彼女とともに別世界が現れ、そこに自らの居場所を発見するのである。そして、事実の回想では最も重要な問い、つまり彼女の兄の自殺の動機に関する問いに答えることができないことがわかるのである。 本論の筆者は、この物語の主人公が、数多の過ぎ去った出来事の動機を論理的に説明することのできない語りや記憶の断片からなる世界に住んでいると述べ、記憶の限られた役割を認める。最後は、全てを忘れただこれから生まれるもの達のことだけを考えよと皮肉で締めくくる。
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